「英語学習は早い方がいい」「日本語を習得する前に、他言語を学んでも中途半端」など、様々な意見が飛び交っているかと思います。今回は、早期の英語学習が母国語に与える影響について考えていきます。
目次
バイリンガルの言語発達への影響
早期から英語に接することで、母国語が失われてしまうのではないか、習得が遅くなってしまうのではないかという懸念があります。
そこで、スペイン語を話すメキシコ系アメリカ人の子どもたちのうち、バイリンガル(スペイン語と英語)のプリスクールに通園した子どもと、通園しなかった子どもを比較し、バイリンガル言語発達について調査した研究論文(Child Dev, 1999 Mar-Apr;70(2):349-62)を紹介します。
1年間の追跡調査研究
この論文では、バイリンガルプリスクールに通った子ども26人と、家庭で過ごしたままの対照子ども20人のサンプルを含み、1年間縦断的に追跡調査しています。
学年の始めと終わりに言語能力の評価
調査では、英語とスペイン語における子どもの言語能力の3つの要素(生産的言語、受容的言語、言語の複雑さ)について、学年の始めと終わりに測定を実施しました。
第二言語としての早期の英語学習により、母国語も上達
調査の結果、早期から英語に接することで母国語に悪影響があるのではないかという懸念の中、バイリンガル幼稚園に通う子どもたちのスペイン語能力の低下は認められませんでした。
それどころか、両バイリンガル・プリスクールに通う子どもたちは、家庭で過ごす子どもたちに比べ、スペイン語の発達において有意な向上を示し、英語能力においても時間の経過とともに有意であり大きな向上を示しました。