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言語能力の習得は2歳から
通常、乳児は2歳を過ぎる頃から、受容的言語と表出的言語を急速に習得し始めます。
逆に言うと、その時期になるまでは、言語能力は発達しません。そこで今回は、言語能力がなぜもっと早く発達し始めないのかを考えてみます。
言語能力の習得が遅い理由は、2つ
ひとつの仮説は進化論的仮説で、ヒトの乳児は頭が大きく、母親の骨盤の大きさが限られているため、早産せざるを得ないというものです。
もうひとつの仮説は、言語システムは十分に成熟しているが、行動に現れる言語機能が出現する前に、音声の効果的な表現を発達させるための聴覚経験が必要という説です。
言語機能を発揮するためには、聴覚経験が必要
2つ目の仮説について、神経科学の観点から支持するエビデンスが増えてきています。
磁気共鳴画像法(MRI)を用いた研究により、聴覚皮質に豊富な情報を伝える機能が1ヶ月までにほぼ成熟していること、また機能的MRI(fMRI)を用いた研究により、聴覚皮質が3ヶ月までに自然音の多くの複雑な特徴を処理していることが示されています。
しかし、音声知覚は聴覚野以外の領域のネットワークに依存しており、このネットワークが成熟しているかどうかは不明です。
2018年に報告された研究論文(Hear Res, 2018 Sep:366:75-81)では、3ヵ月児(N = 6)と9ヵ月児(N = 7)、および成人比較群(N = 15)のfMRIによる機能的評価を用いて、音声ネットワークの成熟度を測定しています。
その結果、発話ネットワークの機能は3ヶ月で成熟しており、言語開始の遅れは脳の未熟さによるものではなく、むしろ経験を通じて表象を発達させるのに必要な時間によるものであることが示唆されました。
臨床ケアや幼児教育などの今後の方向性にも影響があるかもしれません!