退職後や子育て終了後になにをするか
日本は少子高齢化社会です。みなさんの周りにも、仕事を退職してから、あるいは子育てが終わってから英語学習を始めた方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回は第二言語学習と高齢者の生活の質(QoL)について調べていきます。
外国語学習が高齢者の生活の質(QoL)に与える影響
紹介する研究文献(Int J Environ Res Public Heaalth, 2020 Oct 31;17(21):8038)は、高齢の健康な世代における外国語学習に関連するポジティブ心理学の側面に関するものです。
ポジティブ心理学の視点は、様々な活動、特に精神的・脳トレ的な実践に取り組む参加者のウェルビーイングの向上というポジティブな側面に着目します。
高齢者の生活の質(QoL)を向上させる重要な方法の1つとして、
外国語学習に関連する高齢者の主観的感情や主観的満足度を明らかにすることを目的とした研究となっています。
55歳以上が質問に回答した調査
研究サンプル(実験グループ)は、チェコ国籍で55歳以上の105人から構成されました。
対照群は2つ設定され、1つ目の対照群(若年対照群)は、同じくチェコ国籍を持つ19歳から23歳の若年成人(大学生)102名で構成され、
2つ目の対照群(高齢者対照群)は、実験群と同程度の年齢の55歳以上の被験者102名で構成されました。
対照群が年齢の異なる2グループ設定されています。
調査は、主にオンライン質問紙調査を介して行われました。
外国語学習の習熟度は関係なく、幸福感が向上する
その結果、外国語学習自体の客観的な上達度とは関係なく、言語学習が高齢者の主観的な肯定的感情や幸福感を有意に向上させることが明らかになりました。
この結果は、若年対照群とは対照的であり、高齢対照群とは異なるものであったことから、
外国語学習は高齢者の総合的な幸福感を高める有効なツールであることが明らかとなりました。
また、外国語学習は彼らの精神的健康に良い影響を与え、彼らの社会的ネットワークを拡大しました。
さらに、外国語学習は、認知機能の低下による客観的な学習成果の弱さにもかかわらず、彼らにとって有意義な活動であり、人生の一般的な目的、人生の動機を見出すのに役立っているという結果が得られました。
高齢者は幸福感、満足感を感じ、第二言語学習を積極的な意欲で行っているようです。